不登校とは
不登校とは、何らかの心理的・情緒的・身体的あるいは社会的な要因により、登校できない、もしくは登校したくてもできない状況にあり、一定以上の日数を欠席した生徒から、病気や経済的な理由による不登校を除いたものです。
このグラフは、文部科学省が発表した小学校と中学校を合わせた不登校児童生徒数の推移です。平成13年までは、不登校の割合が毎年増えてきていることが分かります。文部科学省、不登校の現状に関する意識
不登校のお子様を持つご両親はとても心配だと思います。不登校のお子様に、どうして学校に行きくないのか尋ねても、納得できる説明が得られないことも多いと思います。
ご両親が学生時代のときは、学校へ行くことがつらいときでも登校していたので、なおさら、理解できないこともあります。
不登校のお子様が学校での出来事を話すときは、学校であったことを否定せず、こちらの意見を言わずに、ただ「そういうことがあったの」と事実やお子様の気持ちを聞いてあげるようにすると、お子様は本当のことを隠さなくても叱られることがないので、不登校の原因を話すことができる場合もあります。
原因を話してもらえたら、それを改善していけるように働きかけることができるようになります。
不登校のきっかけ
友人とのトラブル、いじめの問題、あるいは先生による叱責が多いようですが、本人からはなかなかご両親には恥ずかしくて話しにくいという思春期の心理があります。
不登校になる原因は、お子様によってさまざまです。自分が将来何になりたいかという目標を失っているケースもございます。
不登校との関連で新たに指摘されている課題として、学習障害や注意欠陥、発達障害などがあります。このようなこころの病の生徒は、先生や周囲の友達との人間関係がうまく構築できなかったり、勉強でのつまずきが克服できないといったことから、不登校になってしまう事例も指摘されています。
不登校になりえるこころの病には、これらの他にも、睡眠障害や起立性調節障害、ADHDなども原因していることもあります。こころの病が原因の不登校の解決には、まず、これらの根本的な部分や背景(ベース)を、お薬を使って改善していくことが必要な場合があります。その後で、さまざまな症状が改善していき、学校に行けるようになっていきます。
睡眠障害
朝に弱い体質を持っているとか、睡眠リズムが乱れているとか、そういったお子様が学校に行きにくくなることがあると思われます。
朝が起きにくい体質には、背景に発達障害がからんでいることもあります。
起立性調節障害
朝に低血圧が続くため、眠気が残って、身体の覚醒がしにくいと、遅刻しがちだったり、学校に行こうという意欲が上がらない場合があると思います。
ADHD(注意欠如・多動性障害)
ADHDのお子様は、いじめられる方もいますが、いじめる方もいます。特に、注意障害やマイペースでボーッとしているお子様は、いじめの標的になりやすいので、注意が必要です。
いじめについて
最近、メンタルクリニックで小学生や中学生の問診を行っていて思うことがあります。それは、マイペースでゆっくりしたお子様は、「いじめられやすい」ということです。
マイペースでゆっくりしたお子様は、周囲の素早い攻撃や質問に対して、すぐに答えられなくて、黙りこんでしまいます。その場合、友人からすると反応が薄かったり、自分が無視されていると感じて、その怒りからいじめに走ってしまうことがあります。
マイペースでゆっくりしているということは、言い換えると「優しいお子様」ですので、いい性格ですが、いじめられたときに、いじめに対する反撃が下手なため、いじめを助長しやすい部分がります。そして、いじめがエスカレートしていきます。
そういった場合には、周囲からの問いかけに対して、無視せず反応ができるように、集中力を高めるお薬もございます。こういったお薬を併用することで、いじめが軽減していくケースも見られます。
不登校になりやすいお子様
自分の存在価値が否定されたような、自尊心やプライドが傷つけられている場合に、不登校になりやすいと言えます。お子様に対して、次のような言葉を毎日言っていると、自尊心が傷つきやすい子供になりやすいです。
- 成績が悪い
- 学校に行きなさい
- もっときちんとしなさい
そのため、ご両親が成績の問題や日常の態度などを叱ったり否定したりし続けることを止めることが大切です。
お子様にアドバイスの言葉など伝えるときは、ポジティブな言葉にして伝えるとお子様の自尊心を傷つけずに、お子様の意欲を高めることができます。誉めてあげたり、「がんばってるね」と言ってあげたり、「先月よりもずいぶんできるようになったね」などのポジティブな言葉をかけてあげるなど、お子様の出来ているところ、いいところを誉めてあげるようにしてください。
お子様を誉めてあげるようになると、お子様からの信頼感を得ることができるようになり、反抗心も改善され、不登校も改善していくことが多いです。
親ががんばっている背中を見せるだけで、不登校がよくなる場合があります。お母さんが毎日きちんと生活をしていたら、「自分もダラダラしないでがんばろう」という気持ちが起こったりする場合があります。
また、低ノルアドレナリン症候群でも不登校が起こりやすいです。低ノルアドレナリン症候群については「低ノルアドレナリン症候群」をご覧ください。
不登校の治療
不登校の治療は、次のように行っていきます。
お子様の自尊心の回復
不登校の治療には、お子様の自尊心の回復が、いちばん最初に行わないといけないことだと思います。
自尊心が傷ついているお子様には、「このままの自分でも存在していいのだ」「ありのままの自分でも価値があるのだ」ということを伝えてあげることが自尊心の回復に大切です。
自尊心が回復すれば、自ずと勉強に対する意欲や、友人と仲良くやっていく意欲が高まることが多いです。このように、まずは、お子様を責めるような口調で叱らないことが大切です。
ご両親からの指導
お子様の自尊心には、親子だけで解決しようとするとお互いの感情が入ってくるために、なかなか難しい場合があります。感情が入りすぎてしまったら、親子関係が崩れてしまい、不登校の治療まで踏み込むことができなくなる場合もあります。親子関係が崩れる前に、当メンタルクリニックまでご相談ください。
当メンタルクリニックでのご両親へのアドバイスでは、まず、お子様をガミガミ叱らないように伝えることがあります。そして、お子様との信頼関係が築けるように問診いたします。
また、学校に無理やり行くようには言わず、学校に行くことのメリットを伝えてあげるようにいたします。ただし、そこに親子の感情が入りすぎてしまうと、「お子様が不完全である」という気持ちが子供に伝わり、お子様が学校へ行く意欲を削いでしまいます。
すぐに完璧な状態の子供になるようなことを望まず、少しずつ改善することを目標とします。少しずつ改善することが不登校改善の近道の場合が多いです。いつ何をお子様に伝えるのか、タイミングや時期が非常に重要であることを忘れてはなりません。早すぎるお子様への指導は、逆効果になってしまいますので、注意が必要です。
お子様の問診
当メンタルクリニックでは、お子様を問診するとき、お子様が言いたくないことまでは、深追いして無理に聞き出すようなことはいたしません。
不登校の背景に起立性調節障害や発達障害がある場合には、お薬による治療によって、不登校が改善する場合が多いです。
不登校の背景にある、原因を慎重に見極めることが、短期間で不登校を改善するために、とても大切なことです。