人それぞれにストレスの耐性に違いがありますが、仕事時間が過度に長い方、会社側からのノルマやプレッシャーが多い方ほどうつ病になりやすいものです。仕事のことで憂うつになったり、イライラしたり、やる気が出なくなったりしたときには、安心して相談できる人がいればまだ持ちこたえられるかもしれないのですが、なかなか信頼できる人が周囲にいないという場合も少なくありません。
仕事上では、特に人間関係の悩みがつきることはありません。「あの人とどうやって関わればよいのか」「自分が悪いのではないか、いやそんなこともない」など心がかき乱されるたり過度に考えさせられることもあるでしょう。そのような時には専門家にご相談ください。心の仕組みや対人関係の力動を理解するだけでも、かなり楽になっていくと思います。
うつ病の原因となった仕事のストレス代表例
- 仕事量の多さ
- 勤務時間が不明確である
- 飛び込み営業
- 転勤
- パワハラ
- 仕事のミスで激しく怒られた
- 職場内にいやな人がいる
- お客様からのクレームが入っている
当メンタルクリニックに通院されている方の職業の代表例
当メンタルクリニックでは、次のような職業をされている方が、うつ病で通院されています。
- IT関連や広告代理店などに勤務している方
- 営業職や営業事務である方
- 投資関連の銀行に務めている方や投資家である方
- 苦手な人が近くにいる方、話し合いにくい方が近くにいる方
- 周囲の人が働かない、自分ばかりが多忙である、自分ばかりに苦労が来ていると感じられている方
- 管理職や経営側である方
- 派遣社員やバイトで雇用形態に不安である方
- 企業のクレーム処理係
IT関連や広告代理店
IT関連や広告代理店の仕事であれば、夜中の作業もあり、メンテナンスで日曜日の夜に行うこともあると伺っております。こういった不規則な勤務が多い仕事では、うつ病になりやすい傾向があると思います。繁忙期においては、少ない社員数でも、納期に間に合わせないといけない場合もあり、仕事上で無理をしてしまいます。忙しい時期であっても、責任感を持っている方ほどがんばってしまうので、ストレスは大きくなってしまいます。
営業職
営業職の中でも、とくに取引先との接待の飲み会や休日のゴルフなどをすることが多い方にストレスがかかりがちです。お客さんもどんな方なのか分かりません。取引先の人間関係も複雑で気を使われるでしょう。IT関連や広告代理店などと同様に、営業の仕事は生活が不規則になりがちで、昼間に働いて、夜も接待をして、気が休まりにくく、ストレスが増加しがちです。
また、営業職なので、営業成績などのノルマがあり、上司から小言を言われ続けるなどして、余計にストレスが溜まってしまいます。
投資関連の銀行
投資関連のお仕事をされている方であれば、どこに投資をするべきかの下調べをしたり、資料をたくさん作ったりする必要があります。この場合も夜中まで仕事をすることが多くなります。
投資系の銀行であれば、吸収合併するときの下準備が必要な部署もあり、一つの失敗が大きな損失につながるような仕事であれば、なおさらストレスがかかってきます。
投資家
投資家の中でも特に株やFXなどの為替をしている方や投資情報部門に勤務される方に多いのですが、情報を集めるために、時差のある欧米の情報を夜中や早朝に集めたりすることで、24時間の緊張を強いられ、自分では気づかないうちに精神的ストレスがかかってしまっていることがあります。
部下がうつ病になるメカニズム
どのような仕事であったとしても、ときに忙しい期間もありますので、夜中まで仕事をすることが続くこともあるでしょう。それだけであるなら、ある程度意欲を持って仕事ができる人も多いと思います。
しかし、いつもピリピリとした会社の雰囲気の中で働かざるを得ないことがあります。会社からの注意や小言を多く受けるようになると、「自分はこんなに一生懸命残業もして仕事しているのに、誉められるどころか、怒られてばかりだ」と思うようになり、本来持っている強いモチベーションが維持できなくなってしまうことがあります。これは、どんなにメンタルの強い方でも起こりえます。普段は明るい社員の方にも起こりえることです。
完璧主義や理想主義である社員の方がいらっしゃると、それを部下や同僚に押し付けやすい傾向があります。
通常であれば、社員は、会社の言ったことを真面目に聞こうとするものです。上司の現実的には不可能な正論を完全に受け入れて実行しなければいけないと思う方や文句を言わずに仕事をすべて引き受けてしまう方がいらっしゃいます。
そういった方は、真面目で心優しい性格を持っているのですが、初めから無理なことをやらされているため期限内に仕事が終わらないという事態に陥りやすくなり、ミスも増加することになります。そのような行動でまた会社から叱責されてしまうようになります。
そのような負の連鎖が重なって、次第にお互いの信頼関係が保てなくなることもあります。
上司と部下で信頼関係が弱くなってくると、部下は何のために仕事をしているか分からなくなり、「自分ができない社員だから、また上司から受け入れてもらえない、自分は嫌われている、会社に必要ないかもしれない」とネガティブな思考を繰り返したりや過度な緊張感を持つようになります。そういった状態が続くと、プライベートな時間でも心休まらず、必要な睡眠時間が確保できなくなってきます。それでも、何とか頑張らないといけないと思ってしまいます。
そういった状態は、オーバーワークと考えられるのですが、働きすぎと感じることやのめり込みすぎと感じることなく仕事をしていき、やがて精神面や肉体面を追いつめていくことになります。
うつ病の主な症状
仕事をしている方がうつ病になってしまったときに現れる初期的な症状は
- 最近、仕事のミスが多くなった。ミスを指摘されるようになった
- 動悸
- 胸のつかえ
- 頭痛
- 腹痛
- 集中力が低下
- 仕事の効率が悪くなる
- 寝不足
- 疲れが取れない
- 食欲が落ちる
- 普段よりイライラしやすくなった
- 急に涙が出る
この段階で、メンタルクリニックにご相談いただくと、ご自身の調子を客観的に見られるようになり、多くのお薬に頼ることなく症状を改善していく方法を医師といっしょに考えていくことができます。しかし、仕事をしている方は、会社の組織の中に所属しているがゆえに、無理をしたまま頑張ってしまい、症状を重くしてしまうこともあります。無理をしている自分に気付く必要があります。気付きがないと、気分が沈みさらにネガティブな思考の連鎖になって、前向きに業務に取り組めなくなり、悩むようになります。気合いを入れてもどうにもならない段階になっています。
適度にまじめでない性格の方は、前向きに仕事に取り組めなくなるぐらいまで追いつめられることはないのですが、生真面目な方は、会社を休みたい気持ちと、会社で自分の持ち分を必ずこなさなければならないという気持ちとの間で葛藤し、ストレスをためていきます。
メンタルクリニックの医師からのアドバイスで対応
軽い症状のうちにメンタルクリニックにご相談いただくと、どこで無理しているのか、どこを改善していけばいいのかを、医師と一緒に振り返っていくことができます。
仕事が出来ない状態になってきたとしても、症状がまだ軽いうちであれば、効力が弱めのお薬の助けを借りながら、勤務を継続することができます。それを過ぎてしまうと、お薬の力では間に合わず、休職が必要になる場合があります。
それらの判断に関しては、メンタルクリニックの診察でご相談ください。
うつ病の症状には、腹痛や頭痛などがあるので、内科に相談される方もいますが、内科に通院して改善しない場合は、セカンドオピニオンとしてメンタルクリニックに相談することも選択肢として検討されてください。
メンタルクリニックでの診察にて、休職が必要と判断された方には、会社に提出するための診断書を作成いたします。
会社側の対応は?
従業員から休職の診断書を持って来られた場合の会社側の対応としては、「まだ勤務を続けなさい」と言いにくいのが実情だと思います。苦しい状況でしょうが、仕事を休ませてあげてください。色々な事情があろうとは存じますが、病気休暇を取ることは社員の権利であると見る必要があります。
会社側として気になる復職の時期ですが、どれくらいのペースで良くなってくるかで、復職の時期が異なります。その期間は、短い方から長い方まで様々ですので、定期的な診察で判断をして決めていくことになります。
復職のときには、リハビリ期間を設けると良いと思います。出勤訓練から始めたり、残業のない8時間勤務から始めるなど、会社によってさまざまですが、通勤や職場の雰囲気に慣れていくようにしていきます。
ご本人は休職すると自分のキャリアに傷がつくことを心配される方が多いですが、無理をしすぎて身体を壊したり、重度のうつ病になることがないように、個人や家庭、会社の事情、経済的なことなど、いろいろなバランスを考えて、ご自身の休職を考慮されるとよいと思います。しかし、自分自身での判断や客観的なうつ症状の評価は難しいものです。